「自分には顎がない」「横顔にメリハリがなく、のっぺりして見える」。そんな風に、オトガイ(顎先)のラインが不明瞭であることに、コンプレックスを抱えている方は少なくありません。そして、その原因が、実は「出っ歯(上顎前突)」にあるケースは非常に多いのです。なぜ、上の前歯が出ていることが、下の顎がないように見えることに繋がるのでしょうか。その理由は、二つの側面から説明できます。第一に、「視覚的な錯覚」です。顔を横から見た時、上唇が前方に突出していると、相対的に下顎が後ろに下がっているように見えてしまいます。実際には、下顎の骨の大きさに問題がなくても、上顎との位置関係のアンバランスによって、オトガイの存在感が薄れてしまうのです。例えるなら、前に大きくせり出した屋根のせいで、その下の土台が小さく見えるのに似ています。第二に、「下顎の後方への押し込み」です。重度の出っ歯の場合、下の前歯が上の前歯の裏側に深く噛み込んでしまい、下顎全体が後方の窮屈な位置に押し込められてしまっていることがあります。これにより、下顎が本来あるべき楽な位置よりも後ろに下がってしまい、結果としてオトガイが後退して見えてしまうのです。これらの問題に対して、歯列矯正は非常に有効な解決策となり得ます。抜歯などを伴う矯正治療によって、前方に突出していた上の前歯を、正しい位置まで大きく後退させます。すると、まず視覚的な錯覚が解消されます。前に出ていた上唇がすっきりと収まることで、これまで隠れていたオトガイのラインがはっきりと浮かび上がってくるのです。さらに、下顎を後方に押し込めていた上の歯という障害物がなくなることで、下顎が本来あるべき、より前方で安定した位置に自然と誘導されます。これにより、機能的にも審美的にも、バランスの取れた状態が生まれます。もしあなたが「顎がない」ことに悩んでいるなら、一度、ご自身の歯並びを疑ってみてください。その悩みは、歯列矯正というアプローチで、根本から解決できるかもしれません。