歯列矯正を始めて数ヶ月。周りの人の体験談を聞いたり、ネットで情報を集めたりする中で、「もしかして自分の歯の動き、遅いかも?」と不安に感じてしまうことがあるかもしれません。歯の動きには個人差があると頭では分かっていても、焦りや不安を感じるのは自然なことです。もし歯の動きが遅いと感じた場合、そこにはいくつかの原因が考えられます。まず考えられるのが、骨密度が高く、顎の骨が硬いという体質的な要因です。骨がしっかりしていることは本来良いことですが、矯正治療においては、歯を動かす際の抵抗が大きくなるため、移動に時間がかかる傾向があります。また、歯根が長かったり、複雑な形をしていたりする場合も同様です。これらは生まれ持った特徴なので、変えることはできません。次に、生活習慣に起因する原因です。代表的なものが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血行を悪化させます。歯の移動に必要な骨の代謝には、良好な血流が不可欠なため、喫煙習慣は歯の動きを著しく妨げる可能性があります。また、強い「食いしばり」や「歯ぎしり」の癖も、歯の動きを邪魔する要因となり得ます。矯正力とは反対方向の強い力が歯にかかることで、スムーズな移動が妨げられてしまうのです。そして、最も多い原因の一つが、「患者様自身の協力度」です。マウスピースの装着時間が不足していたり、顎間ゴムの使用を怠っていたりすると、計画通りに歯が動かないのは当然の結果です。では、動きが遅いと感じた時に何ができるでしょうか。まずは、正直に担当の先生に相談することです。自己判断で悩むのではなく、専門家の視点で原因を分析してもらいましょう。その上で、もし生活習慣に原因があるのなら、改善に努めることが重要です。禁煙に挑戦したり、食いしばりを意識して減らしたり、何よりも装置の使用に関する指示を改めて徹底すること。また、バランスの取れた食事や十分な睡眠をとり、体の新陳代謝を高めることも、間接的に歯の動きをサポートします。焦らず、自分にできることから一つずつ実践していくことが、着実なゴールへの近道です。
歯の動きが遅いかも?考えられる原因と対策