様々な事情から、始めたばかりの、あるいは治療途中の歯列矯正を中断し、放置してしまったらどうなるのでしょうか。「少しの間だけなら大丈夫だろう」「またお金が貯まったら再開しよう」。そんな安易な考えが、取り返しのつかない事態を招く可能性があることを、あなたは知っておく必要があります。歯列矯正の中断と放置は、文字通り「百害あって一利なし」です。最も深刻なリスクは、歯並びが「治療前の状態よりも悪化する」可能性があることです。矯正治療中の歯は、非常に不安定な状態にあります。歯を支える骨がまだ固まっておらず、歯根膜も伸び縮みしているため、矯正力がかからなくなると、一気に元の位置に戻ろうとします。これを「後戻り」と呼びます。しかし、問題は単純に元に戻るだけではない点です。中途半端に動いた歯が、周りの歯とのバランスを崩しながら無秩序に移動し、治療前にはなかった隙間ができたり、特定の歯だけが変な方向に傾いたりして、噛み合わせが完全に崩壊してしまうことがあるのです。こうなると、治療を再開する際には、以前よりもさらに複雑で困難な治療計画が必要となり、期間も費用も余計にかかってしまいます。また、装置をつけたまま放置することは、口腔衛生における「時限爆弾」を抱えているのと同じです。ブラケットやワイヤーの周りは、ただでさえ清掃が難しく、プラークの温床となります。通院が途絶え、専門家によるクリーニングが受けられない状態が続けば、装置の周りから虫歯が急速に進行したり、歯茎がひどく腫れ上がる歯肉炎や歯周病になったりするリスクが極めて高まります。せっかく歯並びを治そうとしたのに、結果として歯そのものを失うことになってしまっては、元も子もありません。そして、当然ながら、それまで支払ってきた高額な治療費も、全てが無駄になってしまいます。転勤、妊娠、経済的な問題など、治療を続けるのが困難になる理由は様々でしょう。しかし、自己判断で通院をやめてしまう前に、必ず担当の歯科医師に相談してください。一時的な休止のための対策を講じたり、転居先のクリニックを紹介してくれたりと、何らかの解決策を一緒に考えてくれるはずです。治療の中断という選択は、あなたの歯の未来を左右する、非常に重い決断なのです。
歯列矯正の中断は百害あって一利なし!放置が招く最悪のシナリオ