本日は、矯正歯科の分野でご活躍中の佐藤先生に、歯列矯正治療におけるボトックスの応用について、専門家の視点からお話を伺います。先生、矯正治療中にボトックスを併用するケースが増えていると聞きますが、どのような目的があるのでしょうか。「こんにちは。はい、当院でも特定の症状を持つ患者様には、ボトックス注射を有効な選択肢の一つとしてご提案しています。最も多いのは、やはり歯ぎしりや食いしばりが非常に強い患者様ですね。過度な咬合力、つまり噛む力は、歯のスムーズな移動を妨げる要因になり得ます。また、歯の根が短くなる歯根吸収のリスクを高めたり、ブラケットなどの装置を破損させたりする原因にもなります。そこで、咬筋というエラの筋肉にボトックスを注射し、筋肉の働きを適度に弱めることで、これらのリスクを軽減し、治療計画を円滑に進めることができるのです。患者様ご自身の、痛みや顎の疲労感といった不快な症状を和らげる効果も大きいですね。」なるほど、治療をサポートする役割があるのですね。審美目的での応用はいかがでしょうか。「審美目的で代表的なのは、ガミースマイルの改善です。笑った時に歯茎が見えすぎる状態ですが、その原因は様々です。歯が短い、あるいは歯の位置が低い場合は矯正治療で改善できますが、上唇を動かす筋肉の活動が活発すぎることが原因の場合、矯正だけではアプローチに限界があります。そのような場合に、唇を持ち上げる筋肉にボトックスを少量注射することで、唇の上がり幅をコントロールし、上品なスマイルをデザインすることが可能です。矯正治療で歯並びというハード面を整え、ボトックスで筋肉の動きというソフト面を整える。この両輪で、より完成度の高いゴールを目指すことができるのです。もちろん、全てのケースで必要となるわけではありませんが、治療の選択肢として非常に有用だと考えています」。