大学を卒業し、社会人として働き始めた鈴木さん(仮名・23歳)には、長年の悩みがあった。それは、自分の横顔に全く自信が持てないこと。スマートフォンのアルバムには、友人たちと楽しそうに写る写真はたくさんあるが、横顔のものは一枚もなかった。原因は、前方に突出し、力を入れないと閉じられない口元と、それに伴う間延びした顔の印象だった。特に、食事の際にクチャクチャと音が出てしまうことや、活舌の悪さにコンプレックスを感じていた。彼女が矯正歯科の精密検査を受けた結果、その原因が重度の「開咬」と、それに伴う「上下顎前突」であることが判明した。奥歯で強く噛んでも、前歯は全く噛み合っておらず、常に上下の唇が開いてしまう状態だった。治療計画として提示されたのは、抜歯と歯科矯正用アンカースクリューを併用したアプローチだった。上下の小臼歯を抜歯してスペースを作り、前歯を後退させる。同時に、上顎の奥歯の近くにアンカースクリューを埋入し、伸びすぎていた奥歯を歯茎の方向へ圧下させることで、開咬を改善し、下顎のオートローテーションを促すという計画だった。治療期間は約2年半。決して短い期間ではなかったが、鈴木さんは「これで変われるなら」と前向きに取り組んだ。月一度の調整のたびに、歯が動く痛みと共に、自分の顔が少しずつ変化していくのを実感した。そして治療終了の日。装置が外され、鏡の前に立った彼女は、そこにいるのが自分だとは信じられないほどだった。突出していた口元はすっきりと内側に収まり、鼻先と顎先を結ぶEラインが綺麗に整っている。そして何より、あれほど長く感じていた顔の下半分が、きゅっと引き締まって見えた。開咬が改善したことで下顎が上方に回転し、顔全体のバランスが劇的に変わったのだ。今では、鈴木さんはどんな角度から写真を撮られても臆することはない。自信に満ちた笑顔は、彼女の何よりの魅力となっている。
開咬治療が彼女の横顔にもたらした変化