本日は矯正歯科専門医の鈴木先生(仮名)に、多くの患者様が関心を寄せる「歯列矯正とエラの変化」について、専門的な見地からお話を伺いました。「カウンセリングで、歯列矯正によってエラが小さくなりますか?というご質問は非常によく受けます」と先生は語り始めます。「まず結論から申し上げますと、歯列矯正でエラの骨格自体が変わることはありません。しかし、筋肉の影響で張っているエラに関しては、改善が期待できるケースがあります。エラの張りの原因は、大きく分けて骨格によるものと、咬筋という噛む筋肉の発達によるものの二つに分けられます。歯列矯正がアプローチできるのは、後者の筋肉性のものです」。では、どのような人が変化しやすいのでしょうか。「特に、奥歯に過度な負担がかかるような噛み合わせの方、例えば噛み合わせが深い『過蓋咬合』の方や、無意識に歯ぎしり・食いしばりをしている方は、咬筋が常に緊張し、肥大している傾向があります。歯列矯正でこれらの噛み合わせを正常な状態に導き、顎全体でバランス良く噛めるようになると、咬筋への負担が減り、筋肉のボリュームが自然と落ちてフェイスラインがスッキリすることがあります」。一方で、先生は過度な期待に警鐘を鳴らします。「これはあくまで副次的な効果であり、変化の度合いには大きな個人差があります。また、元々の骨格がしっかりしている方のエラは、矯正治療では変化しません。美容外科で行われるボトックス注射は、直接咬筋の働きを弱めることで筋肉を痩せさせますが、歯列矯正は根本的な原因である噛み合わせを改善するアプローチであり、目的が異なります。歯列矯正の本来の目的は、あくまで機能的で健康な噛み合わせと美しい歯並びを作ること。その結果として、フェイスラインに良い変化が起きることがある、とご理解いただくのが最も正確です」。エラの変化だけを目的とするのではなく、まずはご自身の噛み合わせの状態を正しく診断してもらうことが、後悔のない治療への第一歩だと先生は締めくくりました。
専門医が解説する歯列矯正とエラの関係性