横顔の美しさを評価する基準の一つに「Eライン」という言葉があります。これはエステティックラインの略称で、人の鼻の先端と顎の先端を直線で結んだラインのことを指します。この直線上に唇が位置するか、あるいは少し内側にある状態が、美しい横顔のバランスとされています。日本人は骨格的に、欧米人と比べて顎が小さく、歯が前方に突出しやすい傾向があります。いわゆる「出っ歯」や「口ゴボ」と呼ばれる状態は、このEラインから唇が大きくはみ出してしまい、横顔のバランスを崩す原因となります。歯列矯正は、このEラインを整える上で非常に効果的な治療法です。特に、前歯の角度を改善したり、抜歯を行って歯列全体を後方に移動させたりする治療では、口元の突出感が劇的に改善されます。その結果、これまでライン上からはみ出していた唇がすっきりと収まり、理想的なEラインが形成されるのです。口元が下がることで、相対的に鼻が高く見えたり、顎のラインがシャープに見えたりする副次的な効果も期待できます。もちろん、すべての症例で劇的な変化があるわけではありませんが、横顔のコンプレックスを抱えている方にとって、歯列矯正は自信を取り戻すための大きな一歩となり得ます。美しい歯並びだけでなく、洗練された横顔のシルエットまで手に入れられる可能性があるのが、歯列矯正の大きな魅力の一つと言えるでしょう。佐藤さんは、物静かでいつも口元を手で隠す癖のある女性でした。彼女の悩みは、不揃いな歯並び。人前で話すことや笑うことに強い抵抗があり、そのせいでどこか自信なさげな印象を周りに与えていました。三十歳の誕生日を前に、彼女は自分を変えたい一心で、近所の矯正歯科の門を叩きました。初めは金属の装置が目立つのが恥ずかしく、ますます口数が少なくなった時期もありました。食事もままならず、毎月の調整日には痛みが伴い、何度も心が折れそうになったと言います。しかし、そんな彼女を支えたのは、鏡を見るたびに確実に変化していく自分の歯並びでした。少しずつ歯が整っていく様子は、まるで乱雑だった心の中が整理されていくような感覚だったそうです。一年が過ぎた頃には、彼女の表情に明らかな変化が見られました。以前のように頑なに口を閉ざすことはなくなり、時折、小さく微笑むようになったのです。
歯列矯正が作る理想のEラインと美しい横顔