歯列矯正中は、歯並びが美しくなっていく喜びと同時に、様々な口元のトラブルに見舞われやすい時期でもあります。特に、唇の乾燥、荒れ、ひび割れは多くの人が経験する悩みです。矯正装置が唇の裏側に常に触れていることで刺激になったり、口が閉じにくくなることで無意識に口呼吸が増えたりすることが主な原因です。これらの不快な症状を放置すると、痛みを伴う口角炎や口唇炎に発展することもあるため、日頃からの丁寧なケアが非常に重要になります。まず、基本中の基本は、こまめな保湿です。リップクリームは常に携帯し、乾燥を感じる前に塗る習慣をつけましょう。この時、メンソールなどの刺激が強いタイプは避け、ワセリンやシアバター、セラミドといった高保湿成分が配合された低刺激性の製品を選ぶのがポイントです。装置が当たる唇の裏側まで意識して塗ることで、摩擦による刺激を和らげる効果も期待できます。特に乾燥がひどい夜は、リップクリームをたっぷり塗った上から小さくカットしたラップで覆う「リップパック」がおすすめです。数分間置くだけで、翌朝の唇の潤いが格段に変わります。また、唇の皮膚は非常にデリケートなため、ターンオーバーを妨げる行為は禁物です。乾燥してめくれた皮を無理に剥がしたり、唇を舐めたりする癖は、症状を悪化させるだけなので意識してやめましょう。食事の際は、装置に食べ物が引っかかりやすいため、口を大きく開けたり、唇を汚したりしがちです。食後は口をゆすぐだけでなく、ウェットティッシュなどで唇の周りを優しく拭き、すぐにリップクリームを塗り直すことを心がけると良いでしょう。矯正中の唇トラブルは、適切なケアで十分に予防・改善できます。美しい歯並びを手に入れる過程を少しでも快適に過ごすために、日々のリップケアを治療の一環と捉え、丁寧に向き合ってみてください。
矯正中の唇トラブルを防ぐプロの保湿ケア