営業職として働く高橋さん(27歳)が歯列矯正を始めて一ヶ月。彼女にとって今一番の悩みは、平日のランチだった。ワイヤーを調整したばかりの週は、同僚との外食もままならない。パスタはワイヤーに絡まるし、定食の揚げ物は硬くて噛めない。結局、お茶を濁すだけで気まずい時間を過ごすこともしばしばだった。「これでは身がもたない」。そう考えた高橋さんは、ランチをコンビニで調達するスタイルに切り替えることにした。初めは何を選べば良いか分からず、おにぎりコーナーの前で立ち尽くす日々。しかし、試行錯誤を重ねるうちに、彼女はコンビニの中に「矯正の味方」がたくさん隠れていることを発見したのだ。まず、彼女が必ずカゴに入れるのが、カップタイプの茶碗蒸しだ。温かくて出汁の味が優しく、具材も柔らかい。タンパク質も摂れて、満足感が非常に高い。次に、豆腐コーナーへ向かう。充填豆腐や温泉卵は、醤油をかけるだけで立派な一品になる。サラダチキンも、手で細かくほぐせば問題なく食べられることに気づいた。そして、スープコーナーは彼女にとっての宝庫だった。春雨スープや、野菜がたっぷり入ったカップスープは、体を温め、空腹を満たしてくれる。これらに、デザートとして飲むヨーグルトやプリンを加えれば、栄養バランスも彩りも悪くない、立派な「矯正ランチセット」が完成する。高橋さんは、選ぶ際のポイントとして「噛まずに食べられるか」「タンパク質が摂れるか」「温かいものか」という三つの基準を設けている。この基準を持つことで、広いコンビニの中でも迷わず商品を選べるようになった。今では、その日の痛みの度合いに合わせてメニューを組み立てるのが、ささやかな楽しみになっている。コンビニを賢く活用することで、高橋さんは矯正中のランチタイムの悩みを克服し、仕事のパフォーマンスを維持している。