社会人になって数年、私は自分の笑顔に自信が持てずにいた。少し受け口気味で、前歯が少しガタついている。人前で話す仕事をしているせいか、相手の視線が口元に集まっているように感じてしまい、いつしか手で口を隠すのが癖になっていた。歯列矯正に興味はあったものの、痛そう、高そう、時間がかかりそうというネガティブなイメージばかりが先行し、一歩を踏み出せずにいた。そんなある日、友人の勧めもあって、私は意を決して矯正歯科のカウンセリングを予約した。クリニックの扉を開けるまでは、不安で心臓が張り裂けそうだった。しかし、カウンセリング室で迎えてくれたのは、物腰の柔らかい女性の院長先生だった。「今日はどうされましたか?」という優しい問いかけに、私はおそるおそる自分のコンプレックスを話し始めた。すると先生は、私の話を遮ることなく、静かに耳を傾けてくれた。一通り話し終えると、先生はにっこりと笑い、「そのお悩み、よく分かりますよ。同じような悩みで来られる方、たくさんいらっしゃいますから、安心してくださいね」と言ってくれた。その一言で、私の心の壁がすっと溶けていくのを感じた。それから先生は、私の口の中を丁寧に診察した後、レントゲン写真や歯の模型を使いながら、私の歯がどういう状態で、なぜそうなっているのかを、まるで家庭教師のように分かりやすく説明してくれた。そして、私のライフスタイルや希望を聞いた上で、いくつかの治療法の選択肢を提示してくれた。ワイヤー矯正のメリット、マウスピース矯正のデメリット。費用や期間だけでなく、それぞれの治療で起こりうる痛みや不快感といったマイナス面も、包み隠さず話してくれた。その誠実な姿勢に、私はどんどん引き込まれていった。最後に先生は言った。「矯正は、私たちが一方的に進めるものではありません。あなたと私たちがチームになって、同じゴールを目指す共同作業です。不安なことは、いつでも何でも聞いてください」。その言葉を聞いた時、私の心は決まっていた。漠然とした不安は、信頼できるパートナーとの出会いによって、未来への期待へと変わっていた。あのカウンセリングがなければ、私は今も口元を隠して俯いていたかもしれない。あの一歩が、私の人生を明るく照らす光になったのだ。
不安だらけの私が歯列矯正を決意できたカウンセリング