歯列矯正を行うことで顔の印象が変わる、という話は多くの人が耳にしたことがあるでしょう。これは単なる思い込みや気のせいではなく、科学的な根拠に基づいた事実です。歯は顔の骨格、特に顎の骨に直接支えられています。そのため、矯正治療によって歯が動くと、その土台である顎の位置や形、さらには口周りの筋肉の使われ方にも変化が生じるのです。例えば、前に突き出ていた歯が後ろに下がることで、口元の突出感が解消されます。これにより、鼻先と顎先を結んだEラインと呼ばれる美しい横顔の基準線が整うケースは少なくありません。また、噛み合わせが深すぎたり、逆に開いていたりする状態が改善されると、顔の縦の長さのバランスが変わり、面長な印象や、逆に詰まった印象が緩和されることもあります。さらに、歯並びが整うことで唇が自然に閉じやすくなり、口角が上がりやすくなるなど、表情筋のバランスにも良い影響を与えます。噛み合わせの改善は、左右の筋肉を均等に使えるようにするため、顔の歪みが目立たなくなる効果も期待できます。このように、歯列矯正は単に歯を綺麗に並べるだけでなく、顔全体の骨格や筋肉のバランスを整え、より調和のとれた健康的な顔立ちへと導く可能性を秘めているのです。子供の頃から、私は自分の口元がずっと嫌いでした。少し前に出た歯のせいで、思いっきり笑うことができず、写真を撮られる時もいつも口を固く結んでいました。友人に「怒ってる?」と聞かれるたびに、心の中でため息をついたものです。社会人になり、自分のお金で何か一つコンプレックスを解消しようと決めた時、真っ先に思い浮かんだのが歯列矯正でした。カウンセリングで先生に長年の悩みを打ち明けると、「大丈夫、きっと綺麗になりますよ」と優しく背中を押してくれました。そこから約二年半、私の人生は大きく変わりました。最初のうちは装置の違和感や食事の制限に戸惑いましたが、鏡を見るたびに少しずつ歯が動いているのが分かると、それがモチベーションになりました。そして装置が外れた日、鏡に映った自分の顔を見て、思わず涙がこぼれました。口元の突出感がなくなり、すっきりとした輪郭になっていたのです。何より嬉しかったのは、自然に口角が上がって見えるようになったこと。以前は無理に笑顔を作っていましたが、今は何気ない瞬間にも柔らかい表情でいられるようになりました。
歯列矯正で顔つきは変わる?その科学的根拠