歯列矯正というと、多くの人は装置を使って歯を動かすことだけをイメージするかもしれません。しかし、特に小学生の矯正治療においては、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な役割を果たす「もう一つの治療」があります。それが、「MFT(口腔筋機能療法)」です。MFTとは、簡単に言えば、「お口の周りの筋肉の正しい使い方を覚えるためのトレーニング」です。私たちの歯並びは、実は、外側からの唇の力と、内側からの舌の力という、二つの筋肉の力のバランスが取れた位置に並んでいます。しかし、指しゃぶりや口呼吸といった悪習癖があると、この筋肉のバランスが崩れ、歯並びが悪化してしまうのです。例えば、常に口がポカンと開いていると、唇の力が弱くなり、前歯が突出しやすくなります(出っ歯)。また、舌の位置が本来あるべき上顎のスポットから下がり、前歯を押すような癖があると、歯と歯の間に隙間ができたり、上下の歯が噛み合わない開咬になったりします。いくら矯正装置で歯をきれいに並べても、その根本原因である筋肉の間違った使い方(癖)がそのままであれば、どうなるでしょうか。治療が終わって装置を外した途端、再び筋肉の力によって歯は悪い位置へと押し戻されてしまいます。これが「後戻り」の大きな原因の一つです。MFTは、この後戻りを防ぎ、長期的に安定した歯並びを維持するために不可欠な治療なのです。MFTでは、専門のトレーニングを受けた歯科衛生士などの指導のもと、様々なトレーニングを行います。例えば、舌を正しい位置(スポット)に置く練習、正しい飲み込み方(嚥下)の練習、唇を閉じる力を鍛えるためのボタンを使ったトレーニングなど、その内容は多岐にわたります。これらは、一見すると地味な訓練ですが、ご家庭で毎日コツコツと続けることで、お口の筋肉は正しい動きを記憶していきます。矯正装置という「ハード面」の治療と、MFTという「ソフト面」の治療。この二つが両輪となって初めて、お子さんの歯並びは、真に健康的で美しい状態へと導かれるのです。
矯正治療とMFT!歯並びは口の筋肉で決まる!