口を閉じると顎にシワ?歯列矯正とボトックスの併用記
私の長年の悩みは、いわゆる「口ゴボ」でした。前に突き出た口元のせいで、常にどこか不満そうな顔に見えるのが嫌で、一大決心をして歯列矯正を始めたのです。抜歯をして前歯を後退させる治療は順調に進み、口元の突出感は目に見えて改善していきました。しかし、治療が中盤に差しかかった頃、私は新たな悩みに直面しました。それは、口を閉じようとすると、顎の先に梅干しのようなシワが寄ってしまうことでした。唇を閉じるために、無意識に顎の筋肉にぐっと力を入れてしまっていたのです。この正体は、オトガイ筋という筋肉の過緊張でした。歯を後退させたことで唇は閉じやすくなるはずなのに、長年の癖が抜けきらないのか、筋肉が過剰に働いてしまう。せっかく口元が綺麗になってきたのに、この梅干しジワのせいで、どこか不自然な印象が拭えませんでした。歯科医に相談すると、「歯の移動が完了し、新しい口元の位置に筋肉が慣れてくれば、自然に改善することも多いですよ。でも、もし気になるなら、オトガイ筋の緊張を和らげるボトックス注射も効果的です」と教えてくれました。私は、より完璧な仕上がりを求め、顎へのボトックス注射を試してみることにしました。注射自体はほんの数分。痛みもほとんどありませんでした。効果は一週間ほどで現れました。意識しなくても唇が自然に閉じる感覚。そして鏡を見てみると、あれほど頑固だった顎の梅干しジワが、きれいに消えていたのです。口元全体の力がすっと抜け、洗練された印象になりました。歯列矯正で骨格と歯並びという「土台」を整え、ボトックスで筋肉のバランスという「仕上げ」を行う。この二つの治療を組み合わせたことで、私は初めて心から満足できる自分の口元を手に入れることができたのです。