都内の百貨店で化粧品販売員として働く佐藤さん(28歳)は、常に人に見られる仕事柄、自身の笑顔に高い意識を持っていた。しかし、下の前歯の僅かなガタガタが、長年のコンプレックスだった。歯列矯正を決意した彼女が最初に検討したのは、最も目立たないとされるマウスピース矯正だった。しかし、カウンセリングで歯科医師と話し合う中で、彼女は最終的に「透明なワイヤー矯正」、つまりセラミックブラケットを用いた治療を選択することになる。彼女が決断した背景には、プロフェッショナルとしての仕事への向き合い方があった。マウスピース矯正は、食事のたびに着脱が必要となる。お客様との会話の合間に短い休憩を取ることが多い彼女にとって、その都度バックヤードで装置を外したり、歯を磨いたりする時間を確保するのは現実的ではない、と考えたのだ。また、万が一マウスピースを紛失したり、装着時間を守れなかったりして治療が遅れるリスクも避けたかった。「中途半端なことになるくらいなら、少し見た目のハードルが上がっても、確実性の高い方法を選びたい」。それが彼女の結論だった。治療が始まると、口元には透明なセラミック製のブラケットと白いワイヤーが装着された。マウスピースほどの完全な透明感はないものの、想像していたよりもずっと目立たなかった。お客様からも、指摘されることはほとんどなく、仕事への支障は全くなかったという。むしろ、コンプレックスを解消するために努力しているという自負が、彼女の笑顔に一層の自信と輝きを与えた。約一年半後、装置が外れた彼女の口元には、完璧に整った歯並びがあった。佐藤さんの選択は、透明であることのレベル感だけでなく、自身のライフスタイルと治療の確実性を天秤にかけ、自分にとっての最適解を見つけ出すことの重要性を示している。