本日は、矯正歯科専門医の鈴木先生(仮名)に、患者様からよく質問されるという「歯列矯正と鼻の変化」について、専門的な見地から解説していただきました。「カウンセリングで『矯正で団子鼻は治りますか?』というご質問は、本当によく受けます。その際、私はいつも『鼻の形そのものは変わりませんが、顔のバランスが整うことで鼻の“見え方”が変わる可能性はあります』とお答えしています」と先生は語ります。「大前提として、我々が行う歯列矯正は、鼻の軟骨や骨には一切触れません。しかし、顔の印象というのは、各パーツの単体の形で決まるのではなく、全体のバランスで決まります。特に顔の下三分の一、つまり口元の印象は、顔全体のイメージを大きく左右します」。具体的にどのようなメカニズムで変化が感じられるのでしょうか。「鍵となるのが、Eライン(エステティックライン)と鼻唇角(びしんかく)です。Eラインは、横顔の鼻先と顎の先端を結んだ線のことで、美しい横顔の基準とされます。口元が前に出ている方は、唇がこのEラインからはみ出してしまっていますが、抜歯矯正などで口元を後退させると、唇がラインの内側に収まり、バランスの取れた横顔になります。すると、相対的に鼻や顎の存在感が増し、鼻が高く見えたり、フェイスラインがシャープに見えたりするのです。また、鼻唇角とは、鼻の下(鼻柱)と上唇がなす角度のことです。口元が出ているとこの角度が鋭角になりがちですが、口元が下がると角度が開き、鼻の下がスッキリとして上品な印象になります。これらの変化が複合的に起こることで、患者様自身が『団子鼻が改善した』と感じられるわけです。ですから、特に口元の突出が著しい症例ほど、変化を実感しやすいと言えるでしょう。私たちは、こうした顔貌の変化の可能性もシミュレーションでお見せしながら、患者様が正しい知識を持って治療のゴールを理解できるよう、丁寧な説明を心がけています」。